【紅茶のこと】紅茶の淹れ方の論争
いわゆる紅茶の淹れ方は、正しいと言われる方法は既出及び多くの人が承知していると思いますが、かつては論争まで発展していました。
そのことについて確認していきます。
紅茶消費国としての本場
紅茶といえばイギリスですが、それは産地としてではなく、紅茶を楽しむことや文化、姿勢といったところのイメージで、要は紅茶を消費する本場の国=イギリスです。
そもそもイギリスに茶が伝わったのは、17世紀半ば以降にポルトガル、オランダを経由してです。
しかしながらその伝わり方は、茶や茶器が伝えられただけで、茶に関する礼儀、もてなし、わびさびなどの精神的な文化は十分に伝わっていませんでした。
ちなみに、我が国の茶道は作法として伝わってきており、茶の点て方、飲み方、礼儀、もてなしといったものと、ただ茶を美味しく淹れるだけでなく、生き方、他人とのかかわり方など、日本人としての神髄を茶で表現するかのような哲学があります。
さて、そのイギリスですが、特に興味を抱いたのは精神文化ではなく、おいしい紅茶の淹れ方でした。
茶にこだわる=東洋文化に触れる、ということと、高価な茶について語る=富の象徴でもありました。
紅茶について議論することは、富裕層における嗜みでもあったようです。
論争
紅茶論争は、ビクトリア時代に入ってから激化していきます。
イギリスで飲まれる方法ゆえに、ブラックティーよりもティーウィズミルクの淹れ方についてで、ミルクの扱いが争うポイントになりました。
美味しい淹れ方を最初に提言したのは、1848年の「ファミリーエコノミスト」という家庭雑誌でした。
当時はブラックティーの淹れ方に争点を置いたもので、19世紀後半までミルクは飲料としては一般ではなく、高い栄養価で体によいことは知られていましたが、生乳を飲めば下痢を起こすなどしたので、搾りたてを入手できる人や、ごく一部の身体の弱い人ぐらいしか飲まれていませんでした。
1862年になると、ルイ・パスツールというフランス人が赤ワインの保存のために発見した63度30分の殺菌方法が牛乳にも適用されて、牛乳の保存期間が延びたことにより一般家庭にも普及していきました。
牛乳の普及はティーウィズミルクとして広まりましたが、そのミルクは先に入れるのか、後に入れるのか、ミルク・イン・ファーストかミルク・イン・アフターのどちらがおいしいのかが論争になりました。
ミルクは先か、後か
先にミルクを入れると主張する派は、ミルクの分量がわかりやすく、上から紅茶を注ぐのでよく混ざり、香りも立ちやすいとしています。
一方、後から入れると主張する派は、その先に入れる派のやり方は熱い茶を先に入れるとカップが割れてしまうおそれがあり、それを惜しんでいる貧乏人のようなやり方だとなじっていたようです。
作家のジョージ・オーウェルは紅茶の愛飲家で、20世紀半ば、彼は自説の11箇条を発表しました。
その中で、紅茶が先、ミルクが後とはっきりとさせています。
ミルクを後に入れるのは、量を調整できるということにくわえ、風味を損なうという理由から砂糖の使用は反対としました。
紅茶の論争がより激しくなってくると、紅茶の茶商(トワイニングやジャクソン)たちも一緒に盛り上がりました。
トワイニングもジャクソンも、それぞれ9箇条の淹れ方を提案し、同じような内容ですが、トワイニングはミルク・イン・ファースト、ジャクソンは明言を避けています。
紅茶論争については、2003年6月24日に英国王立化学協会に属するアンドリュー・スティーブリーという博士により、ミルク・イン・ファーストがおいしさに優位性があることが立証されて、一応は決着がついているようです。
ただ、一部ではこの発表の真偽を疑っている情報もあるので、実はまだまだはっきりとしたことがわかっていないんじゃないかとも思えたりします。
まぁ実際に自分で試して、違いを感じるのが一番いいかもしれませんね。
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