Tom Misch『Full Circle』(2026)レビュー:静寂の果てに見つけた、原点回帰のギター・ソウル
アルバム
ジャケット

アーティスト
Tom Misch トム・ミッシュ
アルバムタイトル
Full Circle
レビュー
2018年のデビュー作『Geography』で、世界中の音楽ファンを虜にしたサウス・ロンドンの才子ともいえる、トム・ミッシュ。
あれから8年、コラボを含めた他のプロジェクトを経て、届けられた2ndソロ・アルバム『Full Circle』は、彼が名声の喧騒から一度距離を置き、自分自身と向き合うことで辿り着いた、極めてパーソナルで温かな傑作との評価があるのではないかと思います。
タイトルが示す通り、一周回って「ただの自分」に戻ってきた彼の音楽は、以前よりもずっと自然体で、それでいて深い説得力に満ちているようです。
アルバム全体を貫くのは、これまでのビートメイク主導のサウンドから一転、70年代のシンガーソングライター作品を彷彿とさせる、生楽器の温もりを活かしたオーガニックな響きです。
特有ともいえる、あの流麗でメロウなギター・プレイは健在ですが、今作ではテクニックを誇示することよりも、一曲一曲の「歌」を際立たせることに重きが置かれているんじゃないかと思いました。
特に「In My Hands」や「Better Day」といった楽曲に漂う、ボサノヴァやジャズのスパイスが効いた軽やかなグルーヴは、洋楽ロック好きのリスナーにとっても、耳馴染みの良い心地よさを提供してくれるはずじゃないかな、と思います。
たとえるなら、イギリスで育ったジャック・ジョンソンのような。
また、以前よりも少し低く、落ち着いたトーンで歌われる言葉の数々には、彼がこの数年間で経験したメンタルヘルスの葛藤や、家族への想い、そして日常の何気ない幸せが素直に投影されているのでしょう。
派手なゲストに頼ることなく、自身の歌声とギター、そして信頼するライブ・バンドの演奏だけで構築されたこの世界観は、彼がいかに一人の「ソングライター」として大きく成長したかの証明なんじゃないかな、と感じます。
「成長には興味がない」と語りながらも、結果としてこれほどまでに純度の高い音楽を作り上げてしまう彼の天邪鬼なまでの誠実さが、この『Full Circle』というアルバムを特別なものにしています。
忙しない日常の中で、ふと立ち止まりたくなった時、このアルバムを流せば、トム・ミッシュの奏でる優しいギターの音色が、あなたの心をそっと解きほぐしてくれるはずです。
一周回って辿り着いた、彼の「今」の音は、私たちにとっても、自分自身の原点を見つめ直すための、大切なサウンドトラックになるんじゃないかと思います。
トラックリスト
1. Flowers In Bloom
2. Red Moon
3. Slow Tonight
4. Sisters With Me
5. Old Man
6. Running Away
7. Goldie
8. Echo From The Flames
9. Fear Can’t Hurt Anymore Than A Dream
10. Sultans of Silence
11. Days Of Us (feat.Kaidi Akinnibi)
Spotify
私の視聴環境
Creative Pebble ブラック
音声入力3.5mm ピンプラグ接続
電源USB端子接続 低音用
パッシブラジエーター搭載
出力4.4W アクティブ スピーカー
SP-PBL-BK







ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません