The Kinks『Something Else By The Kinks』(1967)レビュー: 英国の黄昏を彩る、皮肉と愛の万華鏡
アルバム
ジャケット

アーティスト
The Kinks ザ・キンクス
アルバムタイトル
Something Else By The Kinks
レビュー
1967年はサイケデリック・ムーブメントで、多くのバンドが「愛と平和」や「宇宙的な広がり」を歌っていた頃、ロンドンの片隅で全く異なる景色を見つめていたバンドがいました。
それはザ・キンクスで、彼らが放った5枚目のアルバム『Something Else By The Kinks』は、まさに英国ロック史上最も個性的で、かつ普遍的な美しさを湛えた傑作のように思います。
6月21日に誕生日を迎えるリードシンガー、レイ・デイヴィスの鋭い観察眼と、どこかノスタルジックなメロディセンスが結実した今作は、洋楽ロック、特に60年代のUKロックを愛する者にとって、ピックアップ必須の名盤だと思います。
このアルバムの最大の魅力は、当時の流行に背を向け、あえて「英国の日常」という極めてパーソナルでローカルなテーマを掘り下げた点にあります。オープニングを飾る「David Watts」での軽快なビートから、デイヴ・デイヴィスが歌う「Death of a Clown」の哀愁漂うメロディまで、そこには市井の人々の営みや、変わりゆく社会への複雑な感情が凝縮されています。
レイ・デイヴィスが描く歌詞の世界は、時に皮肉たっぷりで鋭く、時に驚くほど優しく、聴く者の心に静かな波紋を広げます。
そして、何と言ってもアルバムの最後を締めくくる「Waterloo Sunset」の存在を忘れるわけにはいきません。
ロンドンのウォータールー駅を舞台に、行き交う人々を眺めるテリーとジュリーの姿を描いたこの曲は、英国ロックの中でも美しい一曲として有名です。
夕暮れ時の淡い光のようなメロディと、レイ・デイヴィスの温かな歌声。
そこには、派手な演出も過剰なメッセージもありませんが、だからこそ、時代を超えて人々の心に寄り添い続ける「普遍的な美」が宿っているのかな、と感じます。
今作で見せるバロック・ポップ的なアプローチや、アコースティック楽器を多用した繊細なアレンジは、後の『The Village Green Preservation Society』へと続く、ザ・キンクスの黄金時代の幕開けを告げるものでした。
レイ・デイヴィスという稀代のストーリーテラーが、自らのアイデンティティを英国の伝統や風景の中に求め、それを唯一無二のポップ・ミュージックへと昇華させた勇気と才能が、このアルバムを「Something Else(他とは違う何か)」たらしめている要因の一つでしょう。
改めてこの『Something Else By The Kinks』を聴き返してみると、60年代という激動の時代に、あえて「日常」を歌い続けた誠実さのようまものは、どれだけ時間が経っても色褪せることのない、優しく包み込むような、美しい黄昏を感じます。
国内盤CD
トラックリスト
- David Watts
- Death of a Clown
- Two Sisters
- No Return
- Harry Rag
- Tin Soldier Man
- Situation Vacant
- Love Me Till the Sun Shines
- Lazy Old Sun
- Afternoon Tea
- Funny Face
- End of the Season
- Waterloo Sunset
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